そんな中で、何を選択するかはそれぞれの個人の自由ですが、素敵な物をたくさん持つよりも本当に気に入った物、どこにでもあるような物で無い物を欲しいと感じている方の、そんな選択に値する家具を作りたいといつも思っています。
イギリスでの大学生活を通して学んだ西洋家具に関する様々な知識と技術。大学卒業後に勤務したロンドン郊外の特注家具製作会社での職業経験。その二つを通してヨーロッパで学問まで高められ、デコラティブアートというアートの一分野になった西洋の家具作りを、日本人である私のフィルターを通して作品に表現しています。
中世はゴシック時代の家具の簡素で素朴な造形、華やかで緻密な18世紀の家具、ミニマルなフォルムを追求した20世紀のモダンデザインまで、それぞれの造形の意義を理解した上でのデザイン過程は私の楽しみでもあります。
それに加えて、大学時代からの専攻であるアンティーク家具修復を通して触れてきた古い家具たちから学んだ、家具のプロポーションに関する感覚、ディテール部分や家具の質感を見る目、これらを作品の仕上がりに反映させて、デザインと素材を高いレベルで結びつけるべく一点一点製作しています。
現在まで家具製作、アンティーク家具修復、商業施設用什器製作を通して様々なお客様と出会ってきました。その経験を通してそれぞれの方たちのこれからの人生、またその先の世代にも渡って愛される物が必要とされる時代が来ていると感じます。
新品の美しさ、使用感の美しさ、その両方を支える製作技術や修復技術を使って、物を愛し、大切に長く使っていこうとする方々の思いと共に、モノを生かしていってあげる。そんな気持ちを込めて日々の仕事に取り組んでいます。