大学生だった頃広尾の「ペニーワイズ」というアンティークショップでアルバイトを始めました。
それまでは、物は新しくてパリッとしてて、綺麗で、新品のにおいがしている物が一番だと思ってました。
例外と言えば古着のジーンズくらいで。
バイトの仕事でお店や倉庫にあるアンティーク家具の山の中で過ごす時間が増えてきて、知らない間にふと気付くと、
均一ではない古い家具の色合いとか、
傷の入った家具の表面とか、
長年にわたってこすれて色が薄くなっているところとか、
材木が歪んで痩せてきて天板がデコボコになっていところとか、
シミがついているところとか、
汚れがたまって黒ずんでいるところとか、
そんな古い家具の持っている色や質感がいつの間にかかっこいいと思い始めていました。
そのうちお店の家具の修理をするようになってくると、新しい木を自分の好きな古い質感にできたら面白いなと思い始めました。
その後イギリスに住み始めてみると、そこは大好きな古い物の質感に囲まれた世界でした。
大学で家具の修復を正式に勉強してみると、科学的に、論理的に工芸技術を駆使して古い質感を作りだすものすごいオタクの世界があって、僕のはるか先を行く人達に出会いました。
こんな切り口から家具の世界に入り込んだので新しい家具を作っていても、仕上がりの質感をどうするかが常に気になってしょうがない。
作る物のデザインや素材に最適な質感を表現できれば完璧だなとつい思ってしまいます。
定番で作っているパインのテーブルもシャビーなフレンチスタイルの家具にしたいので、使い込んで木が痩せて、傷が入って、色も褪せて、汚れもシミもついている質感を表現したいと思って作っています
このテーブルも、見た目は汚れて使い込んだように見えるのですが、実際は清潔な新しい材料を使って古く見えるように作っているだけなので、いたって清潔な家具だということです。
古い質感が既にできているので使っていても、傷を気にしなくても大丈夫です。
すごく肩の力を抜いて使えるという利点もあります。
家具作り:2012年02月01日